ただ泣きたくなるの

ふと日常の何でもない瞬間に、なんの理由も無く涙が流れる、例えば洗い物をしてる最中だったり、NHKで子供向け番組をつけっぱなして惚けていた時など、何かを思い出したり感傷的な瞬間が訪れるわけでもなく、ふと気付いたら頬を涙が伝っている、そんな詩的な、ちょっとカッコイイ瞬間、それがわたしには無かった

そういう瞬間があればきっと自分ももっとギターや歌が上手かったり、歯の浮くようなセリフが平気で言えたり、金髪にしたり、ソラニンで泣いたりとか、中華屋でトマトと卵を炒めたよくわからない料理を頼む女子に文句を言ったりはしなかっただろうと思うが、やはり先天的にアーティスティックでは無い自分が泣く瞬間を振り返ると、魔女宅を見た、とか、小指をめちゃくちゃぶつけた、とか、朝からコーヒーメーカーを棚から落として粉々に粉砕したとか、めちゃめちゃわかりやすいはっきりした理由でしか泣けないのであった

どっちかというと暇な瞬間が多いしボーっとしてるタイプであり、遠くを見てる事も多いし、顔も何かを考えている様な儚げな表情をしているタイプではあるんだけどその実私はそういう時何にも考えていない、完全なる無である

きっと脳内のロジックが複雑にアーティスティックに折り重なっている人はそういった無に近い状態、意識と無意識の間の自我の部分で感情がいい感じに着火し涙が流れるんだろう

カッコイイ、、

自分もそういうの欲しかった

でも凡人の私は結局辛いことを思い出し泣いてしまうのだ、無意識の時はマジで何も考えて無い、なんなら腹が減ったなぁ、くらいが私の無意識の限界なのである、だが無意識のうちに涙では無いものが流れてしまう事はある

先日、無の状態でテレビをつけっぱなしていた時である、お昼の映画がやっていた、本当につまらない映画だった

5〜6年ほど前だろうか

自分はかつてあえてつまらない映画を見てそれをいかにつまらないかをプレゼンし人に勧めるという嫌がらせをよくしていたのだけど、趣味が悪い事に気付き最近はやめている

それでもやはりそういった箸にも棒にもひっかからない、クソ映画と呼べるほどの突っ込みどころも無い、どうしようも無い映画がやっていると今でもチャンネルを止めてしまう自分がいる

その日もマジでやる気あるんか!?というポンコツ映画がやっていた、

自分は、

わぁかってる、わぁ〜かってるよ、少し静かにしてくれ!

やれやれ、そろそろ出番ですかね、、

と、クソ映画の主人公になった気分でいつも通り壁に布団を立てかけてだらしなくもたれかかり、ぬるい麦茶を飲みながら映画を見た、映画自体は1時間半あるが内容的には船にバケモノがいます、というものでストーリーは見なくても最後までわかった、映画が後半に差し掛かり映画内の死人もかなりの数になっていた頃、自分は何かに違和感を感じた、

何の違和感なのかわからずしばらくじっとして考えた

 

どうもズボンが、おけつの辺りが妙に冷たいな、、濡れている様な感触がある、、

 

警部、、どうも臭いますねぇ

 

え、でも、そんな事普通ある?

通常ウン○を漏らす瞬間というのは、ずっと我慢してて便所にたどり着けず、とか

悪ふざけで屁を全力で頑張ってしまった時に中身がこんにちはしてしまった、とか

ラーメン二郎でニンニクをマシマシにしてしまった、とか

何かしらの理由があるはずである

今の自分はどれかに該当しているか、否、

ノー便意、ノー屁、ノー二郎である

人間としてフラットな状態

ノーマルなヒューマンとしてステイしていたのである

という事はなんだ、冷房が効いているからその風がいい感じに部屋の気流とぶつかりズボンの裾から入りこみ我が尻を冷やさんとす、そして我、便をしたと勘違いせんとす

などと考えたが結果的にやはり濡れている気がするので私はゆっくりと席を立ち、何故か中腰でトイレに向かった

結果として私はその時、足の親指ほどの○ンコをおパンツにドロップしていた

絶望感に苛まれながら無意識下に生み出された我が子を見つめた、臭かった

私の脳内は混乱を極めた、理由なき犯行、原因を究明するにはあまりに複雑、完全なる迷宮入り事件である

そして何より事件はまだ進行中だ

私はこの現場に残された爆弾(ウンコな)を処理せねばならない

とりあえず私はおけつを拭き、当時はウォシュレットも無かったので一旦おけつシャワーを浴びる事にしようとしたが、まずはこのくされウ○コパンツをゴミ箱にダンクシュートしなければと思った、が、ちょっと待て、この夏場にウンの付いたパンをゴミ箱にダンしたらどうなるか、それは部屋中にウンのスメルがティーンライクスピリッツ、ハローハウロウ

という事で捨てる前にまずウンを洗い流し、ビニールで固く縛ってから捨てる、という方法を取る事にした、人を殺して山に埋めるのってたぶんこういう気分なんだろう、と少し思った

悲しかった

やだった

夏の暑い日だった、部屋からはクソ映画がそろそろクライマックスを迎え、爆発音がか細く鳴っている

 

俺は洗面所でおパンツに付いた○ンコを洗い流している

 

しかも捨てる為に

 

しかもフルチンで

 

夏の日に、

 

 

俺は自分の頬に涙が伝うのを感じた

 

 

明日、死のう

 

 

そんな日を先日ふと思い出した、

涙は流れなかった

ひどい日記を書いてしまい、今若干泣きたい