謎のラケット

私の家の寝室には謎のラケットがかけてある

ラケットと言ってもテニスでも卓球でもなくバドミントン、バトミントン?

しかも1本だけ

これは私がバドミントン部だったわけでも、バトミントンの選手が好きと言うわけでも無い

なんとなく部屋を掃除していた時に出てきたラケットで、1本しか出てこなかった、これではゲームができない、成立しないでは無いか、気になってもう一本を探したが、何年経っても見つからない、しかもバドミントンのセットを買った記憶が1ミリも無い、たぶんだけどめちゃくちゃに酔っていたとしてもバドミントンのラケットを買う事は無い、そのぐらいにバドミントンには興味が無い、マジバドミントンには悪いけどそんぐらいの存在なんだわ、

名前の最後にトンが付くのは可愛いとは思う

考えられる可能性としては近くの多摩川なんかに友人たちとワイワイ遊びに行って、レジャーシートなんかを広げて、それぞれがお手製のサンドウィッチとか鶏ハムなんかを持ってきていて、ワインなんかを飲みながら  いい休日だねぇ〜、なんて 言いながら

そろそろ夕方だね〜、なんて 言いながら

まだ帰りたくない、俺らずっと遊んでいたい いつまでもぶっ飛んでいたいぜ♪ なんて事を言いながら

じゃあ近くの俺ん家でピザパ?しちゃおーぜ?

そんで朝まで?アゲて?いこーぜ?

みたいなのが考えられる可能性だが、

ハッキリ断言する、そんな爽やかな休日を過ごした事は無い、そんなアイパッドのCMみたいなホリデーは私の生活には無かったのだ

そうなってくるとどんどんこのラケットの出所はわからず俺はだんだん不気味に思えてきた。

自分は神様はまったく信じていないのだけど迷信とか言い伝えは心のどっかで信じてしまうところがある、物には魂が宿ると言うし

なんだか捨ててしまうのも怖い

何よりつがいの片方が見つかっていないのが怖い

しょうがないのでちょっと気味は悪いがせめてもう片方が見つかるまで部屋の一番目立つとこにかけておこう、もしかしたらなんかご利益とかあるかもしれない、そう思い何年も前から部屋にかけてあるのだ

もちろん部屋の壁の真ん中にラケットが1本だけ吊るしてあると非常に変である

近所に住む人なんかがたまに家に飲みにきたりするんだけど、皆 ラケットを見ては

アレは?

なんで一本なの?

バドミントンが好きなの?

等、質問責めに合う事になる

そしてどれだけ説明しても結果として

変な人だなぁ

になってしまう

そうか、、俺は変な人なのか、もう立派に大人、まともなちゃんとした人

そう思っていたはずだったのに

 

そう思って数年前を思い出していた

それは俺が水族館に行った時、わたしは結構生物が好きで中でも海洋生物、その中でも変わり種、クリオネとかチンアナゴとかクラゲ、あとデカイやつ、シャチ!とかイルカとかサメを見るのが好きでよく水族館に行く

そして水族館とか動物園とか博物館とかで最も好きなのがおみやげ売り場である

とにかくおみやげ、しかもお菓子とかはどうでも良くて、明らかに何10年も前にデザインされたであろうキーホルダーとかホログラムが貼り付けてあるめちゃくちゃダサいメモ帳とかガラスの塊の中にどうやってるのかわからないけど立体的に絵が描いてあるやつとかそういうグッズを見たり買ったりするのが好きなのである

なので必ずそういった施設に行くとおみやげ売り場を見るようにしている、そこで偶然にも発見したのがかなりデカめのリアルタイプのペンギンの置物だった、かなり実物大に近く置物と言ってもソフビというか柔らかい素材で作られていて割れたりはしないやつである、まあまあな大きさなので高いかと思ったら2500円くらいで買える、俺は迷う事無くそれを手にしてレジに並んでいた

そこから数ヶ月、わたしは偉くそのペンギンが気に入ってしまい、食卓や作業する傍らに置き時々は話しかけたりしながら共に暮らし、挙げ句の果てには友達が飲みに行く時にリュックに入れて持ち歩くようになってしまった、

これはもう、アウトである

言いわけができないくらい変な人

居酒屋に現れたおじさんのリュックからペンギンが出てくるのである

何でもゲラゲラ笑って酒を飲んでくれる友人達の顔は引きつっていたしその日は誰とも目が合わなかった、さすがに自分でもそれは変だな、と思う

しかしながら気の迷い、なんてものは人間にはいつもあるものだし、人に迷惑をかけるような事はしていないのだからいいじゃないか

と開き直ったりしながら更に数年前を思い出してみた

 

たぶん秋口くらいだったと思う、若干気候も寒くなり始め、夏の終わり感が漂って少しさみしい雰囲気

気持ちも少し沈みがちだった

自分はぜんぜん夏が似合わない男、と言われ続けているが季節で一番好きなのは夏だし、夏の間は心にブーストがかかっていてかなり元気に過ごしている、夏が終わってしまうのは寂しい、なんとかもう少しこの気持ちを延命できないものか、その気持ちが間違った方向にブーストした結果

俺は部屋にテントを張っていた

普通の一般のおうちの部屋に

当時はなんていい考えだと思っていたし、これなら毎日キャンプに来た気になれるとはしゃぎテント内に漫画やお菓子を持ち込んでラジオを聴きながらそこで過ごしていた

雰囲気を増す為にとなりの部屋のパソコンから環境音やとりのさえずりなどを流してランタンを点けたりしていた

これを今冷静な気持ちでみたら

完全なるアウトである

ちょっと変わってるとかのレベル超えてるやんけ

やはり自分は少し変なのかもしれない、

そういえば専門学校の時ずっとグラサンかけてたし、授業中でも、家で晩御飯食う時も片時もグラサンを手放さなかった、めちゃくちゃ変な子だったし、、

 

そろそろそういう因果から逃れてもっとまともに暮らしていきたい

そう思いながら わたしはラケットを眺めている

連休最終日

外は雨

俺は今餃子が食べたい

 

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